Realtime:kiss
「今日は、ありがとう、楽しかったとは、言えないけど・・・」

「いいねぇ、正直で。益々気に入ったなぁ、お前の事」

また、言った。


「あっ、あのねぇ、あり得ないんだから。初対面で・・・そんな事・・・」


私は言い切った後、踵を返し、マンションへ駆け込もうとした。


が、碕岡蒼佑の腕が私の腕を掴み、それを許さなかった。


グイッと引っ張られ、ヒールの私はよろめきながら碕岡蒼佑の胸の中に収まった。



私はビックリして碕岡蒼佑を見上げたんだ。


「ちょっと、危な・・んっ・・!」



一瞬の出来事だった。


後頭部に手を廻され、抵抗できないよう、更には腰にまで腕を廻され、私は、奴に唇を侵されたんだ。


「んっ・・やめ・・!」

私が止めてと口を少し開いた途端、今度は舌が口内へ侵入して来た。


上手い・・・コイツ・・・


「・・気に入ったって言ったじゃねぇか・・」


いつの間にか離れた碕岡蒼佑の唇がそう言った。


私はただボーッと碕岡蒼佑の形のいい唇を見ていた。

「フッ、・・・そんなに良かったのかよ」

そのセリフに私は我に返った。


かぁっと、顔に血が昇る。

「しっしっしっ、信じらんない!」


右手をかざして碕岡蒼佑をひっ叩こうとしたけど、あえなく空振った。


「おぉっと、あぶねぇ・・・」


私の右手を掴み、引き寄せる。


そして碕岡蒼佑の右手はまた腰に廻される。


「さっきはとろ~んとして可愛かったのによぉ、まさか、まだ物足りねぇ、とか?」


そして、また私は彼の唇を受け止める羽目に・・・









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