Realtime:kiss
「おい、こら、待て!」


私を背中越に呼び止める。

ヤレヤレと、私は溜め息混じりで振り向いた。

「だから、何!」

「・・・今から一緒に行って欲しいとこがある。
お前はだだ、俺の側から離れずに黙ってればそれだけでいい」


「はぁあ?言ってる意味、分かんないんですけど」

碕岡蒼佑は、じっと私を見据えてこう続けた。


「ある人の前で、恋人のフリをしてほしい」


・・・・・・・・・・


ばっかじゃないのぉ、この男・・・


何で私が奴の恋人を演じなきゃなんないのよ。


「俺、女の知り合い、あんま居ないんだ、とにかく時間がない、早く乗ってくれ」


え?ちょ!
ウソ!

急かされ、私はあれよあれよと車に押し込められてしまった。


どこに連れて行かれるのか、私は不安で仕方ない。

車に押し込められた直後は、バカだとか人でなしだとか、散々喚き散らしたが、碕岡蒼佑は眉間に皺を寄せ、ただ一言“うるさい、黙れ!”と威圧的に発しただけだった。






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