Realtime:kiss
「着いたぞ、いいな?
あくまでもお前は黙って俺の側に居てくれればいいんだ。分かったな?」


「・・・・」


「はぁ、返事くらい、しろよ、分かったな?」

「マナマナのコースでいいよ・・・」


マナマナとは、老舗のイタリア料理店。

どんな理由か、何の為か話してくれないから分かんないけど、休み返上して付き合うんだから、それ位奢って貰っても罰は当たらない。


「オーケー、マナマナだな・・・」


蒼佑はやれやれといった感じで頷いた。





車を降り、周りを見渡すと、どうやら此処は料亭のようだ。


私なんかが易々敷居を跨げるような、そんな安っぽいお店でないのは一目瞭然で。


一体これからどんな人物に会うというのか・・・


更に不安が募る。


「・・・なんだよ、やる気満々だなお前」


っ!!!!!!


私は前を歩く碕岡蒼佑の左腕を無意識に掴んでいた。


「ばっ、ばっかじゃないの!」

「はははっ、・・・あんま、緊張すんな」


碕岡蒼佑の左腕に回した私の右手を軽く二度ほど叩きながら奴はそう言った。


私の不安な気持ちを察してくれていた。


何故か少しほっとした。








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