威鶴のmemory


「トーマ」



ピクッ、威鶴の声に反応した俺。

そうか、威鶴の記憶があるから威鶴の声が出せるのか。

そして……依鶴がここに連れて来られた理由がわかった。



「ワガママ言うな。ソラもトーマの言うこと聞けよ?」



説得。

依鶴は仲介役として連れて来られたんだ。

これ以上の適任はいない。



「……威鶴くんがそう言うなら……しかたないわ」

「ありがとう」



……うわ、威鶴が優しい……。

いや中身は依鶴だってわかってる。

威鶴だって一応は優しさを持ってた事も確かだ。



でもアイツならきっとここで……。



『わかればいい』



とかそんなこと言うんじゃないか?

……少し寂しく感じた。

威鶴はここにいる。

でも親友だったアイツはもういない。



「トーマ?」



心配そうな依鶴に、笑ってごまかし返した。
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