逢い死て


鳴り響いていた音楽が終結し、深々と頭を下げて、ぞろぞろと去っていく人達。

「ユー、ワルでしたぁー!次のバンドは、ジャンキー!」

向かって右から入場してくる人の中に夕都がいた。彼の姿を目に写した私は、どきりと胸が高鳴って、思わず背筋を伸ばす。

スポットライトに照らされ、MCをし、ライヴハウスで歌えることに嬉々としている彼は、なんというか、別人だった。
ステージの人中で唯一黒髪で、モノクロな服装の彼はいつもの彼なのに。
夕都がとても遠いような気がした。


しっとりしたメロディーから始まった演奏は、この場の空気をがらりと変えた。
夕都の芯の通った歌声が、甘く響き渡る。皆聞き入っていた。彼の歌声の後ろに流れている楽器のメロディーも、さっきとは180度違って美しかった。夕都の声を目一杯に引き立たせていた。


私はどっぷりと生温い世界に沈んでいくような、そんな気持ちになった。




< 4 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop