ため息と明日



少しばかり、昔のことを思い出していると



私の前に、キレイなグラスがそっと置かれた。




「お待たせ致しました」




こういう時、マスターが店主らしく振舞うのも私好みだった。



「ありがとう」



相手の目を見てお礼を言うと、ちょっとだけ首を傾けて、またこの人はやさしく微笑む。



その表情に安心して、グラスに口づけた。








「やっぱり、マスターのカクテルは落ち着く」




自然に口角が上がるのを実感できる。




「そう言ってもらえると光栄だよ」




お世辞でもなんでもなく、この店と人と...すべてが癒しの空間なのだ。




家に帰っても、どこかまだ気が張ったままで、会社に居る時の緊張感がすぐに無くなるわけじゃない。




だからこそ、自分を解放できるこの空気が、




私にとっての不可欠なオアシスだと言えるのだ。



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