雪風‐冷たくさらっていくもの‐
次の日、僕は木葉の伝言通り、風乃に木葉のもう大丈夫だという言葉を伝えた。
木葉は、そっかと一言呟いて、それからちょっと黙った。
「ひどいね、砂雪」
「うん」
木葉の恋心を覆ったのは、僕だ。
砂雪は冷たすぎてさらさらと砂のように手のひらから零れる。
溶けないから、砂のようなのだ。
木葉の恋心を覆った雪はそんな雪だから解けて無くなることはない。
それこそ、風乃が触れてさらっていかない限り。
でも僕は僕の雪で恋心を覆ったりなんかしない。
僕の想いは隠したほうがいいものなんかじゃない。
いや、本当は隠した方がいいのかもしれないけど、知ったことか。
「風乃」
「なぁに?」
「好きだ」
だから、自然にそう言うことができた。
もう想いも、どう応えるかも知っていた。
だから安心してそう伝えられたのだと思う。
風乃は少しびっくりしたように瞳を大きく開いて、それから微笑んだ。
その微笑みは、私もだよ、好きだよと語っていて、すぐにどこかへ行ってしまうように儚かった。
砂雪、と風乃の唇が音をたてずにそう紡いだ。
「ごめんね」
< 17 / 18 >

この作品をシェア

pagetop