FlowerRose



「好きな女が出来た…って聞いたよ、俺は」



(好きな…女…?)



「あんなに綺麗な人フッちゃって…」



知らず知らずの内に、口から出ていた



「…その同級の先輩は、盗み聞きしてたらしい」

「盗み聞き?」



(あたしもしてんじゃん、盗み聞き!)



「『美人でも、頭が良い訳でもなくて、バナナの皮ですっ転ぶような馬鹿女だけど…なんか好きなんだよな…オレに向けるあの笑顔が…すぐ照れるトコが…全部がたまらなく好きなんだ…そんな女、初めてなんだ』……これが、先輩が盗み聞きした話」

「…それって…」



バナナの皮ですっ転ぶ―



あたしは入学式の時の記憶がフラッシュバックした



『この辺はすべりやすいから、気をつけてね』


『入学おめでとう』


バナナの皮ですっ転ぶ馬鹿女―



ガタンッ



あたしは、自分でも知らぬ間に店をとび出していた

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