FlowerRose
「ニャー…」
小さな声で鳴く子猫を見て、オレは英子を思い出した
「…そうやって…小さな声でオレを呼ぶ声が…好きだった…いや…今も好きだ」
オレはまるで、英子に告白でもするように、子猫に小さく微笑みかけた
「ニャー」
その時―
再び鳴いたかと思うと、子猫は勢いよく道路に飛び出した
「!!」
子猫には、大型トラックが迫っている
「危ないっ!!」
オレは飛び出した
小さな声で鳴く子猫を…
守りたかった
英子と重ねてた
ドンッ
キキィーーッ
鈍い音をたてて、トラックがブレーキを踏む
オレは遥か遠くに飛ばされていた
「ミー…」
血でぼやける瞳に、恐怖で怯えるかのように震える子猫が映った
良かった…
助かったのか…
オレは石のように重い腕を動かして、子猫の頭を撫でた
「…もう…大丈夫だよ…」
体が重い
痛みなんてもうない
ただ、全身の感覚が麻痺しているだけだ
ああ…オレはもう…死ぬのかな…
短いけど…良い人生だったな…
中学に入って、サッカー部に入って…たくさんの頼もしい後輩が出来て…
アイツ…修人も…
良いサッカーしてたよな…
それに…英子に出会えた事…
それがオレの人生の中で、一番…幸せだった…
英子…
天国にいっても忘れないよ…
生涯で初めて…
心の底から愛した女を…
ずっと一緒に居るって約束…守れそうもないや…
ごめんな…英子…
さよなら………英…子…
ここでオレの意識が途切れた