お腹が空きました。
今までむんずと口をへの字にして腕組みしながら立ち続けていた杉崎が初めて前のめりになって言った。
「だろ?なんといってもタルト生地は前日から仕込んだやつだからな。しっとりした奴も美味いが俺はどっちかと聞かれたらサクサク派だ。」
「…え?」
「……?」
「これ、杉崎さんが作られたんですか…?」
目の前の狼さんが、
ピクリと動きを止めた。
「…お前、気付いてたんじゃなかったのかよ。」
恐ろしい目に宿る赤い炎に紗耶はガタンと椅子を鳴らして一歩退いた。
「…えぇ?なな何をですか?」
「何をって…、俺が………あーーもういい。」
ガチャンと言わせながら近くにあった回転いすに杉崎は腰を下ろす。
頭を抱える狼の顔を、紗耶は恐る恐る遠くから覗きこんだ。
「…あのー…。」
「なんだよ。」
「あ、あの。これ、杉崎さんが作られたんですよね?」
「だからなんだ。」
頭を抱えた指の隙間から、怒りの瞳がギロリとこちらに向けられる。
ヒィィっ