お腹が空きました。
「そうなんですか?女子社員なら結構自分の部署も他の部署の話もしますよ。ねぇ、紗耶。」
「うん。」
紗耶はトマトの丸焼きにかぶり付きながら頷く。
「まぁ俺は興味あるんだけどね。特に俺らの年代、今年ちょうど移動があるから。」
俺はどこに配置されるのだろうか、と牛野は空をあおぎながら笑った。
「移動⁈」
紗耶はおもわず右手の箸をとめる。
牛野の隣に、ふわりと並ぶ杉崎を想像し、紗耶は慌てた。
「うん。同期の半数以上は移動すると思うよ。シャッフルシャッフルー。会社の意図はよくわかんないけど。多分あれかな、空気をフレッシュにして気合い入れ直させる為かな。」
牛野は唐揚げをさらに注文し、紗耶の前にある空の皿をテーブルの隅に寄せる。
「去年は上の代がごっそり入れ替わって焦ったなぁ。」
「ああ、牛野さんすみません。」
紗耶は慌てて他の皿も寄せ始めた。
「紗耶ちゃん唐揚げも好きでしょ?」
もう少ししたらまた来るからね、と牛野はほほ笑む。
そんな様子をみて、由美がテーブルに突っ伏しながらにやりと笑った。
「…牛野さんってチャレンジャーですよね。あの食いっぷりを知った上で紗耶を飲みに誘うなんて…。あれですか?もしかして餌付けとかですか?」
紗耶は驚いて由美にバッと視線を送る。
何を言い出すんだと思えば。
「…(そういえば。)」
以前、妙な勘違いをされていた事を思い出し…。
カラカラとやらしい顔をして笑う由美に紗耶はあわてた。