お腹が空きました。


「あのね、由…


「あっはっは!さすがの俺でも彼氏持ちには手出さないよ。」


可笑しそうに笑う牛野に、由美は「え?」と口を開けて目を点にする。

「それにおっかなすぎて絶対無理だなそれは。俺命が惜しいし。紗耶ちゃんの事になったらあいつすごいしねぇ。ねぇ紗耶ちゃん?」


「あーー…。」


冷や汗を流し、目を泳がせる紗耶に、牛野もジョッキの動きを止めた。


「…あれ。もしかしてまだ言ってなかった?」

「えっと、その。…はは。」

「…信じらんない!!なんで牛野さんが知ってて私が知らないのよ!!ってか誰とよ!!」


ぐわっと角を生やす由美に、紗耶は頭を両手でガードしながら涙声で叫ぶ。


「だって由美ちゃん杉崎さんのこと怖いっていっつも言ってるんだもんんーーーっ…!!」

「え、、は、、……杉崎さん?!」


肩をいからせ、目を見開いたまま、由美は口を金魚のようにパクパクとさせた。




「マジかぁ…。」


驚愕を隠せないまま由美は呟く。

「…マジっす。」

ケーキうんぬん無しにして、この度の経度を簡単に説明し紗耶は両手で顔を覆った。

改めて自分の口から言うと、なんか恥ずかしい。

「何照れてんのよ。気持ち悪い。」

「え、酷くない?」

「酷くないよまったく酷くない私にだけ喋らせて自分の事は黙ってた誰かさんに比べたらまったく全然酷くない。」

「…本当にごめんなさい。」

早口で淡々とまくしたてる由美に紗耶は深々とこうべを垂れた。


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