お腹が空きました。
◆
信じられん。
その一言につきるな…と紗耶はげっそりした顔でパソコンに向かう。
一部の人間がばたばた動き回る我がオフィスで、紗耶はいつも通りの作業をしながらチラリと部下と話し合いをしている杉崎係長に目をやった。
淡々とした表情をしながら書類片手に次々と指示を送る彼の目元にはくまの一つもない。
「…ほんと、すごい人だな。」
ぽそりとそう呟いて、紗耶はパソコンに視線を戻しながら色々…、色々思い出していた。
朝。
散々運動した後、仮眠程度の睡眠をとり、案の定紗耶より早く起床して昨日そのままにしておいたキッチンを片づけ、軽い朝食を作って食べ、そしてきっちり“仕事用の顔”を作ってから出ていったのだ。
杉崎という男、あなどり難し。