お腹が空きました。
な、なんか可愛いお母さんだなぁ。

しょげている杉崎少年を想像してしまい、紗耶は思わず微笑む。

「なんか…聞いてた話と違います。」

「ま、受け取り方だよねー。あの子まだ小学生だったしアハハ」

ひとしきりクスクス笑った後、亜栗はふと遠い所を見るように呟いた。


「…だからあの子、一番にこだわるのよね。」


え?

「一番?」

「うん。」

そううなずいて、亜栗は優しく微笑んだまま紗耶を見つめる。

「誰かの“一番”が欲しくてしかたないくせに、…曲げたへそを戻すタイミングが分からないんだろうねー。フフ、まーだお菓子を作ってないふり続けてるし。」

「(あ、やっぱりバレてますよー杉崎さん。)」


紗耶は一緒に笑いながらふと思い出していた。


一番ねぇ…。


一番…。




『「…焼きたてだったら更にいい香りがするんでしょうねぇ。ああ、でも、そういえばこのまえいただいたチーズケーキ、あっれも美味しかったなぁ。最高でした。」

「そうなのか?」

「ええ!今まで食べたチーズケーキの中で、もう、ダントツ一番です!」



「…一番?」


「え、はい。そうです。一番ですっ。」




「…そうか。」





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