お腹が空きました。

「うう…。」

「もう、いいのか?他にも言いたいことあったらついでに言っとけ。」

抱きしめながら、杉崎は優しく紗耶の耳元で尋ねる。

紗耶は小さく横に首を振り、その後杉崎を遠慮がちに見上げた。

「こ、この際なんで、杉崎さんも普段言えない事、言っちゃって下さい。」

「俺もか?」

「はい、ずっ。私も色々言っちゃったんで。全然オッケーです。どんとこいです。」

鼻をすすりながら紗耶は自分の胸をどんと叩く。

「そうか、じゃあ…。」

「はい。」

杉崎はしばらく考えた後、

紗耶を見つめてゆっくりと伝えた。






「紗耶、…愛してる。」




紗耶は目を見開いて、杉崎を見上げようとしたが、

大きな手に押さえ込まれて彼の表情は分からなかった。

「…そんぐらいだな、俺は。」

「…そ、そですか……っ。」

ぼわっっと顔にものすごい熱がのぼる。

し、

信じられない。

杉崎さんの、

あの杉崎さんの口からそんな言葉が聞ける日が来るなんて…


紗耶は足の裏が浮いているような感覚を覚えながら、ただ杉崎の腕にすがった。


「…あ、」

「ん?」

「…私もう一つ言いたいこと、あります。」


杉崎は腕の中を覗き込む。


「なんだ?」




ぐうぅぅぅぅ…



「…お、お腹が空きました。」



杉崎は口を開け、拍子抜けしたような顔をし、とたんにクククッと可笑しそうに笑って、


「これでも食っとけ。」


紗耶に甘い甘いキスをした。







fin.
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