恋……スル?-菅野 聡 編-
「どうしたんだ?
何か止まってるよ」



リュウジに声をかけられて、ハッとした。

…ヤだな。
昔の思い出に浸りすぎてるかも。



「ごめん、何でもないの。
はい、コレ」



私はなるべく平然を装いながら、持っていた缶コーヒーをリュウジに渡した。



「うわっ、あったけぇ」



「ふふっ
リュウジも風邪ひいちゃうから、早く帰らなきゃダメよ」



そう言いながら、私は拾った半券をお財布にまた戻そうとした。



「………………っ!?」



「…おーい、心晴ちゃん?
やっぱりまた止まってるぞ」



「……………………っ」



私の動揺する表情を見て心配してくれるリュウジだけど。

でも今はもう、平然を装えなかった。



お財布に戻そうと思っていた半券。

だけど私のお財布の中には既に、私の半券は入っていたのだから。


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