†危険な男†〜甘く苦い恋心〜Ⅱ


「樹里、ちっちゃいな」




「廉が、大きいんだもん」




そういえば、昔もこんなことあったな。




廉があたしを抱き締めて、こうして暖かい会話をして…。




「……っ…ひっく…」




「樹里!?」




いきなり泣き出したあたしに、慌てて肩を掴む廉。




変わってないな。




こういう優しい所も、全部。




「ううん…なんでもない。」




涙を隠すように彼の胸に顔を埋めると、慰めるように優しく抱き締められた。




「悪い。不安にさせてるよな…」




何も言わなくても気付いてくれる彼に、少し申し訳なくなる。




記憶を失って一番辛いのは廉なのに、あたしがこんなじゃダメだよね。




「ほら、下着も着ろよ。風邪引くぞ」




背中をポンポンと撫でられると、とても安心できる。




「せっかく、だから…もう一回…する?」




驚いたのか、廉は目を丸くした。




「ごめん、嫌だった…?」




「そんなわけないだろ。すげぇ嬉しい」




廉は軽々とあたしをお姫様抱っこした。




「れ、廉っ!重いから…」




「全然重くねぇから、気にするな」




優しく笑って、寝室へと向かう彼。




あたしはその温かい体温をもっと感じたくて、首に抱き着いた。



< 162 / 179 >

この作品をシェア

pagetop