わたしのピンクの錠剤
 
「陽子さん、私は双子だったの?」

「いいえ。どうして?」
 

私はちょっとためらったけど、やっぱり聞いてみることにした。


「母子健康手帳の子供の名前のところに下平哀哉って書いてあったの」


陽子さんは私が後悔してしまうほどに驚いた顔をした。

「母子手帳、どうしたの?」

「見つけたの。親父の写真を探していて、ホントに偶然に」


「それに書いてあったんだ。下平哀哉」


陽子さんは確認するように私の顔を見る。

私はそれに応えるように頷いた。


「お父さんは何て言ったの」

「親父?怒ってた。絶対、下平には連絡するなって」

「まあ、そうだよね」


私は伏し目がちだった視線を上げて、陽子さんを見つめる。

「下平を知ってるの?」

「そんなぁ、知るわけないじゃない」

 本当に知らないの?

 本当は知ってるんじゃないの?

 お母さんの事故のことだって、本当は知ってるんじゃないの?

 
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