磯野くんと花沢さん


ブチっ。


俺はリモコンで、国民的アニメの再放送を消した。


「次郎‼ご飯よ‼」


「あー‼」


腹の底から叫ぶ。


でないと、返事をするまで呼ばれるからだ。


まるで、ネーサンみたいだな。


んなことを考えながら起き上がる。まだ、カツオってつけないだけの常識を持ち合わせた親で良かったろうか。


「あんた最近どうなの?」


から始まり、水平線よりも水平な学校生活を根掘り葉掘り掘り下げてくる母親から、逃げるように飯をかっ食らう。


野球して、勉強して、飯を食らって、野球する。


ただそれだけ。


それ以上のことはなにも…。


「そういえば、花沢さん元気?」


変化球。


9回の裏、満塁のツーストライクで、アイドルが始球式で投げるような球。


まともに腹に当たり、俺は咳き込むしかない。


「確か居たわよね?あんたよく可愛いって話をして…」


二階に戻った。


思いっきりドアを閉める。


ベッドにダイブして再考してみた。


野球して、勉強して、花沢を見て、飯を食らって、野球して、また花沢を見て。


そう考えると、水平線も、蹴躓くだけの起伏はあるかもしれない。


また明日、挨拶だけしよう。


それくらいはいいだろう?


いくら俺が、磯野だからって。










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