幸せまでの距離
翔子との結婚生活と同じように、また失 敗するのではないか、と、保の不安は尽 きなかったが、それは杞憂(きゆう)に 終わった。
見合いで知り合った保の再婚相手。
現在保の妻である女性は、天涯孤独の身 だった。
生まれた頃から施設で育ち、親の顔も知 らないという女性で、昔から、自分だけ の家庭を持つのが夢だったそうだ。
保に尽くす、家庭的で芯のある強い妻。
保との間に授かった息子を大切にし、滅 多なことで泣いたり怒ったりしない、温 和で気の長い女性。
「妻と出会って幸せになれたけど、メイ のことを忘れたことは一度もなかった」
もう一度、保は告げた。
「妻は、僕に娘がいることを知って る……。
『それでもいい』と、僕と結婚してくれ た。
メイが望むなら、僕は何だってするよ。
金銭的な相談にも乗るし、一緒に住むこ とだって厭(いと)わない…!」
「冗談やめてよ」
メイはそっけない声で返した。
「こんなことでいちいち泣かないでくれ る?
男の涙は信じないことにしてるし、今さ らアンタに父親役なんて求めてない。
勘違いしないで。ただ、顔が見たかった だけだから」