きのこうどん
この後は彼女になされるままだった。
 
「じゃあ、チューするから動かないでね!」
 
「何で?」
 
恥ずかしくって。
そんなことされるのはうれしいけど嫌だった。
 
「アキト君知らないの?」
 
「何?」
 
「結婚する二人はチューしないといけないのよ。」
 
「ん~?」
 
しばらく悩んだものの了解した。
 
だって、
 
「結婚してくれないの?」
 
なんて泣きそうな顔して言うんだもん。

じっとしているボクに向かって彼女の唇…いや、顔が近づいてきてボクも目を瞑った。
 
空はかんかん照り。
ジジジジジって
セミの鳴き声が聞こえていた。
 
初めて触れた彼女の唇は温い。
 
自分以外の唇に触れるのは変な感じがする。
 
変な…感じだ。
 
目をあけると笑顔の彼女がそこにいて
  
「絶対に忘れないでよ!結婚のこと!」
 
なんて目を輝かせて言うんだ。
 
そう言うと、彼女は母親の方に走って行ってしまった。
 
ボクはちこのこと守るから、一生大切にするから、大きくなったら結婚しよう。
 
最後に言いたかったそんな感じの言葉は
まったくもって口から外には出ることなく
 
胸のドキドキに押しつぶされまいと
ボクは
ただ、彼女の後姿を見つめているままで
一歩も動けなかった。
 
女の子ってすごい。
って思った。
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