きのこうどん
しばらくして、小学生の弟の実や父さん、そして近い親類の者が続々とやってきた。

みんな、爺ちゃんに最後のあいさつをするために。

沈黙が続く。10人ぐらいの人がいるというのにただ、その時を待っていた。


「ねぇ母さん、おなか減った。」


もうすぐ4時になろうとしていた頃、実がそう言う。


「あれ?もう4時だ。」


ばあちゃんが言った。
実にそう言われるまで自分たちが病室に何時間も閉じこもりっきりになっていることに気が付かなかったようだ。

すると、叔母さんが言う。

「あっちの大部屋にお菓子を用意しておいたから食べていいよ。」

そう言ってボクは弟を連れて叔母さんの言う大部屋に行った。

お菓子や飲み物が山積みになっている。
それに、簡単な軽食もいくつか置いてあった。

「やった。ポテチあるじゃん!」

そう言って軽快に封を破る弟を見て
何だが無性に腹が立った。

「実…」

「兄さん早く食べないとなくなるよ。」

弟はこれから起こることを理解していないのだろう。
誰もが知っているこの状況で、笑いながらお菓子を食べようというのだから。

いや、こんな時だから平常を装っているのか?そんなことを考えながらも、自分もそこら辺にあるお茶のペットボトルのふたを開けた。久しぶりに水を飲んだ気がした。

実がお菓子を食べ切ろうとしていると、父さんが部屋に入ってきてタバコに火をつけた。


「…変化あった?」

ボクがそう聞くと

「いや。」

と、一言だけ呟やき、タバコをふかした。

「ケホッ…ケホッ…病院内は禁煙だぞ!」

実が、父さんに行った。

「みのるぅ、かてぇな。」

長年しみついた癖というものはなかなか治るものでもなく、注意したところで治らない。父さんの持論だ。

「まぁ、お前も大人になればわかるって。」

そう言いながら、タバコをふかした。
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