テディベアの彼女

「そういえば、この辺りじゃなかったか?」


びくっ


「な、な、なにが…?」


まさか
昔、この辺りで事故があった、とか…?

おもわず耳を塞いだ。

それでも怖いもの聴きたさで、塞ぐ手に力は入っていない。

だからお父さんの声はしっかり聞こえている。

そんな私を知ってか知らずか、
お父さんが私の質問に答えるべく口を開く。


「なにって…





今朝、鹿をみただろう?」


「へ?」




なんだ。

鹿か。


「まだこの辺りにいたりするのかな。
良、ちょっと周り見てみてよ。」


ホッとした私に
お父さんからの急な提案。

本当は、霊がいたら嫌だから周りなんて見たくなかった。

でも、
今朝見た鹿がまだいるなら
見たかったのも事実。

私は、窓に張り付き山の中に目を凝らした。








「うわあ!!!!!」

突然、車が激しく揺れる。

ドン!キキーッ!パーッ!という物凄い音。

そして、強い光に包まれて。


最後に感じたのは、物凄い身体への衝撃。





平和な日常が、崩れ去った気がした。
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