テディベアの彼女
気づけば、事故現場に立っていた。

横を見ると
ぐしゃりと潰れた自家用車と
前側が壊れたトラック。

その下のコンクリートは血で染まっている。

―私、やっぱり死んだんだ。

だって潰れている車は
間違いなく私が乗っていた車。
一番酷く潰れているのは
私が乗っていた辺り。



上の方から、一筋の光が見える。

ふ、と死ぬ前に聴いたラジオを思い出す。


『強い後悔が残っているなら。』


『チャンスは二回ある。』


その話が嘘じゃないなら

私がどうしても叶えたい願いは一つ。

後悔しているのは一つ。


「あの人と話したかった。」


でももうそれは叶わない。

だから

その願いが叶わない今、願うのは一つだ。


「あの人に、もう一度あいたい―…」





私はまだ、
あのテディベアを抱えていた。

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