テディベアの彼女

死。

今の自分にはあまりにも身近すぎるワードに、生唾を飲みこむ。

そんな私に構わず、有人さんの話は続く。


「まぁ、大抵はそうなる前に一族総出で祓うんだけど、
それでも歴史の中には何人も、そうやって死んだ人はいる。

そんな中でも、一番憑かれやすいのが綾ちゃんで、
その綾ちゃんが一番頼りにしていたのが、幼なじみでもあり彼氏でもあった幹斉くんだった。」


「…は」

え……彼氏?!

2人の過去…綾さんがキーマンと思われる。

きっと2人が別れたとかではないだろう。

じゃあ、その綾さんに一体何が…。


思考にふける私を横目に、有人さんは昔話をするみたいに淡々と続けた。


「ある日のことだった。
いつも通り学校に行った帰り道で、僕は本家に呼び出された。

急いでここに来た僕を待っていたのは、
口から涎をダラダラと流しながら床でのた打ちまわっている女性と、
それを囲むようにして座っている、本家の駐在陰陽師たちの殆ど。


当時の僕はまだ半人前で、修行中の身の上だったから弱いやつしか担当したことがなかったけど、
そんな僕でも、その状況が異常なことはわかった。」

< 46 / 63 >

この作品をシェア

pagetop