夜籠もりの下弦は恋を知る

「あっ…!」

突如、蝶がふわりと舞い上がった。

ひらひらと、上下左右に揺れながら、知章の手から離れていく。



しばらく、三人は蝶の行方を眺めていた。



「あ!蝶が!」

知章が庭へ走る。

どうやら庭の草木の間に蜘蛛の巣があったようだ。

優しい知章は巣にひっかかった蝶を助けにすっ飛んでいった。




「…重衡様はもう、私からお心を離してしまったのでしょうか…?」

不意に知盛が、以前会った時の輔子の言葉を口にした。

「兄上…?」

「そなたの北の方がおっしゃっていたことだ。この屋敷に来て、泣きそうな声で私に問うてきた」

「輔子が、この屋敷に!?」

重衡は普段の彼女の行動を知らない。

まさか自分に黙って夫の兄に会っていたとは。


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