夜籠もりの下弦は恋を知る

前世の妻が現世でも妻にならなければいけない決まりなんて、どこにもない。

(重衡さん…)

まとわり付く女子をはらい、段々と近づいてくる彼を眺めながら、潤は少し感傷的になった。







 「こんにちは」

重衡は潤の席までやって来ると、笑顔で要件を述べた。

「一緒にお昼、良いですか?」


(う…)

迷う。

ここでOKを出せば、他のクラスの女子から睨まれるのでは?

いやいや、すでに廊下から痛い視線を無数に感じるが…。


「いいけど、アタシもいるからね」

「構いませんよ」

潤の葛藤など無視して揚羽が勝手に了承した。


(まあ…いっか?)


重衡はお許しがでると、その辺の机から椅子を確保して座り、弁当を広げた。


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