夜籠もりの下弦は恋を知る
重衡がやんわりと指摘した時だった。
「しーちゃん?」
見知らぬ女性の声が三人に届いた。
「……彩音(アヤネ)?」
重衡は自分達の前方から歩いてきた女子高生に目をやった。
「しーちゃん、今しーちゃんの家に行こうと思ってたんだよ?」
「しーちゃん」とはどうやら重衡のことらしい。
彩音と呼ばれた彼女は重衡に近寄った。
「はい、これ。借りてた本」
「ああ、わざわざありがとう」
ナチュラルに会話が続く二人。
「あの子、誰かな?潤は知ってる?」
「さあ…知らない…」
(すっごく可愛い人だな~。足細!身体きゃしゃ!目クリクリ!)
こそこそ話す潤と揚羽に気づいた重衡がわかりやすく説明する。
「潤さん、彼女は島崎彩音といって、俺の幼なじみです」
彩音はペこりとお辞儀をした。
「彩音、彼女は藤沢潤さん。俺の恋人」