君への小さな想いを掲げて *my first love*
戸部山くんのお父さんは、私達の隣に並んだ。

「話はあとで聞かせてもらうから。ここじゃ、風邪ひく。親御さんに連絡しときな。光、レントゲン室につれてって舞にやるように頼め。」


「…ああ。」


「俺は一回、タバコを吸い終わったら行くよ。レントゲンが終わる頃には診察室にいるから」

戸部山くんは小さくため息をついて、屋上のドアに手をかけた。


「タバコはやめろってあれほど…」


「え?タバコはやめろ?」

小さく呟いたのが聞こえて、繰り返して言ってみると戸部山くんがまたも小さなため息をついた。

「親父、一回タバコの吸いすぎで肺癌になったことあんだよ。なのに、治ってもまたタバコ。もういっかい肺癌にでもなったらどうすんだか…」


「戸部山くんは、優しいね。」


「はっ!?」

私が言うと、戸部山くんは階段で足を踏み外しそうになった。

顔は少し赤い。


「優しいね。」


「…うっせ。」


もういっかいいって見せると、戸部山くんは下を向いて平然を装った。

耳赤いから、照れているのがバレバレなのに。






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