恋はいっぽから!
それは……




生徒に知られたくないからなのか、




ニシハルはどんな食べ物が好きかとか……



どんな趣味を持ってるのか、とか……



休日はどう過ごしているかとか……。




そういったことが、意外にも全くといっていい程……



知られていない。




好きな人であるならば、絶対に知りたいであろう彼の本来の姿を……




誰も、知らないだなんて。



不思議というべきか、不自然というべきか……。





「仁志先生は聞き上手だけど…、あんまり自分のことは話さないからかもしれないな。」



「………。そーですか。では…寺澤先生は、ご存知ですか?例えば……、仁志先生に彼女がいるか、とか…。」





「………。」



………。無言……?





「……三船。」



「……はい。」



「…教師だってな、イチ人間なんだ。」



「……はい?」



「立場上、言えることと言えないことがあるっていう…複雑なものがある。」



「もちろん、存じあげております。」



「…三船は賢いからわかるだろーけど、それでも、聞いてみたいことがあるのなら……」



「…………。」



「……本人に、聞いてみなさい。」



「………!」



「……毎回英語で100点とる奴が…、授業で理解できないハズもない。」



「……あの……。」




完全に……、見透かされてる。




「…お前はもうちっと素直だといいな。色々…、損してそうだ。」



寺澤先生はそう言って…、にっこりと笑った。




『先生』の、こういう真っ直ぐな笑顔は苦手……。



つい……、信じたくなるから。



頼りたくなるから。





「……今……、ピンときました。英語、たった今理解できたので…もう大丈夫です。ではッ、私はこれで…。」




「またいつでも来なさい。」




「…………。」




私は寺澤先生に一礼して、くるりと踵を返した。





職員室を出ようと、ニシハルのすぐ後ろを通り過ぎようとした所で……。




「三船。」



「……!」




ニシハルに……、腕を掴まれる。






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