恋はいっぽから!
「…はい、莉奈ちゃん。」
「ありがと……。」
泣き疲れて、落ち着いた頃に…
境内で振る舞われている甘酒をもらって、ふたりその場へと…しゃがみ込んだ。
「あ゛~スッキリした。」
甘酒を一口口に含んで、真っ赤な目をした彼女は…小さく微笑んだ。
「私も…スッキリしました。毎日勉強ばかりで…何だか心にぽっかりと穴が開いてしまっていたみたい。涙で…潤されたわ。」
二人そのままぼんやりと…黄昏れる。
しばらくそうしていると……
「…あっ…」
莉奈ちゃんが…、小さく叫ぶ。
「……ニシハル!」
「えっ?」
莉奈ちゃんが指さす方を見ると……
そこは流れる人波。
「絶対ニシハルだった。初詣に…来てるのかな?いっぽ、後つけるよ!」
「え?ええ…?」
「いーから早くっ。」
彼女に手を引かれて…、私はなされるがまま。
甘酒片手に、それ零さぬようにと…
必死に後をついて行った。
「…こっちに歩いていたってことは…これからきっと参拝するんだね。」
彼女は参拝客の一番後方からピョンピョン跳ねて…
彼を探す。
けれど私は…
探してるつもりはなくても。
いとも簡単に…見つけてしまう。
「………いた。」
人よりちょっと背の高いニシハル。
嫌でも目立ってしまう…立ち姿。
「……あ、ホントだ。行こう、いっぽ!」
「……待って!」
でも……
彼はさっきから斜め下を向いて。
誰かと…話している。
「………調査隊、出動します!」
私がアクションを起こすよりも早く…、莉奈ちゃんが列から外れて、駆け出して行った。
「……………。」
人波の間から……
ニシハルの隣りにいるその人物の姿が、見え隠れした。
真っ白なコート。
華奢な体型。
彼に見せる……妖艶な笑顔。
「……紺野……先生。」
手元からするりとー…
紙コップがすべり落ちた。
「………。いっぽ……。」
いつの間にやら戻ってきた莉奈ちゃんが、白い息を弾ませながら……
私の元へと駆け寄って来た。
「……帰ろう、いっぽ。」
もうすでに枯れたと思っていた涙が…
また、頬を伝っていた。