恋せよ男子

初夏

蒸し蒸しとしだす初夏の空気。
登校通路は衣替えを終え、半袖の制服をそれとなく着こなしている生徒達が元気に行き交っていた。
その中でも目立つ茶髪の髪のひょろりとした男子生徒が大きな欠伸をしながらゆっくりと登校してきた。
そう、この男こそ主人公の男である。

「へい、イノッチ」
「いのっち、おはよーさんっ」

いきなり大柄な2人の男子生徒に後ろからタックルとエルボーをかまされたイノッチこと井上慶太は崩れ落ちた。

「いってーなー。てめぇら朝からなんなんだよ」
慶太はよろめきながら痛む身体を起こして2人をにらみつけた。

「やだ、そんな顔で見ないでー。朝のお約束じゃない」
男子生徒の一人が腰をくねらせながらシナを作る。
「山中、いい加減オカマのマネはやめろ」
「あら、いやだ。最近のマイブームなのにー」
山中が更に気持ち悪い声を出したので慶太は顔をひきつらせた。
それを見てけらけら笑ってるのが金髪頭の鈴木だ。
人は彼らを三ばかトリオと呼ぶ。
慶太はとんでもないといつも首を降るが、類は友を呼ぶだ。

くすくすと可愛らしい控え目な笑い声が聞こえ、慶太が振り向くと、、。
オゥ、ノォ~~!
そこには1番見られたくない女子生徒が立っていた。
「た、高橋、花澄さん。おはよう」
慶太は顔を真っ赤にして震える声で挨拶
した。
花澄はぺこっと頭を下げると校門の前に駆け出していった。

「逃ーげられたっと。しかもフルネーム呼び?なんで?」
鈴木がにたにた笑いながら慶太を問い詰める。
慶太は顔を赤くしたまま全速力で2人の魔の手から逃げた。


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