先生に会いたい
私はくるみの手を放し、本能のように先生のもとへと走った。
「桜!だめ!行っちゃだめ!」
くるみの声が聞こえた。
でも、周りなんて見えない。
聞こえない。
もう先生しか見えない。
誰にも止められない。
先生・・
先生・・
会いたかったよ・・
喜びが悲しみへと変わるのに、そんなに時間はかからなかった。
私は足を止めた。
「ママ~!これ食べたい!」
「あたしも~!」
小さな男の子と、女の子。
「パパに言いなさい。」
その子供達に微笑む、綺麗な女の人。
その腕には、もっと小さな赤ちゃんを抱いていた。
「どれ?食べすぎて、腹壊すなよぉ!」
そして…先生。
死ぬほど会いたかった人。
いつも頭から離れない人。
今、目の前にいるのに…。
遠すぎるよ…。
どこにでもいるような、幸せそうな家族。
“パパ”の城島先生…。
バカだ、私。