オレンジ
chapter1

あぁ、もう、本気で嫌だ。

抜けてる、鈍くさい、ドジ。

昔から家族や友達に、耳にタコが出来るくらい言われ続けてきたけれど。
今日ほど自分のこの性質を恨んだことはない。


「はあ!?携帯落としたぁ!?」
「うん…駅着いて、時間見ようとしたら、なくて…」

あたしはとりあえず、唯一暗記していた陽菜(ひな)の携帯に、公衆電話からコールした。
中学のとき、あたしより早く携帯を持った陽菜には、家の電話からよくかけていたので覚えていた。

「あんたって、ほんと…」

受話器の向こうからため息が聞こえた。
陽菜の呆れ顔が目に浮かぶ。

「陽菜、わかってるから。その先、言わなくても」
「だよね。で、なんであたしに電話?あたし、見てないよ。あんたの携帯」
「そっかぁ…」

かすかに抱いていた期待も砕かれ、今度はあたしがため息をついた。
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