オレンジ
陽菜の言うことは正論だ。


「…そうだね」
「だからさ、念のため、携帯は変えなよ
。せっかく戻ってきたのにもったいないけど。なんかあってからじゃ遅いじゃん?」
「…うん。そうする」

じゃあまた明日学校で、と言って電話を
切ると、バッグに携帯をしまった。
今度は絶対に落としたりしないよう、バッグの中のファスナーつきのポケットに入れ、ファスナーもしっかり閉めたこと
を確認する。


これでもう、大丈夫。

駅のホームの屋根からぶら下がっている
古びた時計が指すのは午後6時15分。

5時にバイトを上がったのに。
いつもならもうとっくに家に着いている時間だ。

駅はまだ帰宅ラッシュの最中。
休みでなければ、あたしはこの帰宅ラッシュに混じって放課後のバイトに向かっ
ている。

今日は創立記念日だった。

お腹も空いたし、携帯ショップには明日行こうかな。


「何かあってからじゃ遅いし」

陽菜の言葉がリフレインする。

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