俺と初めての恋愛をしよう
俺のわがままに付き合わせていることは分かっている。でも、どうにもこうにも、今日子を手放したくないんだ。だから、今日子が落ち込むことは全然ないんだぞ?」
「部長」

今日子を後藤は抱きしめ、頭をなでた。

「きっと、一緒に暮らしていくと、こんなことの連続かもしれない。ケンカもするだろうし、機嫌も悪くて八つ当たりをしてしまう時もあるだろう。でも、お互いをもっと深く知るためにはそれが必要だと思う。まだ、今日子は俺に対して遠慮をしているところがある。それは仕方のないことだと思っているし、無理して合わせなくてもいい。これからだよ、これからだ」
「……ありがとう」

後藤は、今日子を取り巻く環境が激変し、それに合わせようとしていることは分かっていた。
最近見せる疲れは、このことが原因だろうと、後藤は思っていた。
今日子の顔をまじまじと見つめ、後藤は唇を合わせる。

「今日からよろしくな」
「こちらこそ」
「ピザでもとるか」
「そうですね」

後藤が見守ってくれていることは分かっていたはずなのに、今日子は一人焦っていたようだ。これでいいのだろうか、後藤は後悔していないだろうかと、取り越し苦労ばかりをして、気が休まっていなかった。
今日子を好きでいてくれていることは、後藤の態度を見ればわかる。信じてみようと思った自分の心を信じ切れていないだけだ。
ピザを食べ、この日は早く休んだ。翌日の日曜からは、朝から片づけをした。
今日子の使っていた家具は、ホームセンターで買ったもので、カラーボックスが主だった。
後藤は二人で使う家具をそろえると意気込み、インターネットで情報取集をしていた。

「今日子、何か足らないものは?」
「はい、えっと、結構あります」

パソコンでネットを見ている後藤が今日子に声をかける。
今日子は、後藤のパソコン画面を見て伝える。

「遠慮をしないでいいなさい」
「キッチン用品や、掃除道具、それからタオル類でしょうか」
「そうか、買い物に行くか?」

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