誰も信じない
「ちょっと橘さん、何ボーっとしてるの?」


隣の席の寺田さんに注意されるまで、どうやら私は新田さんを見つめていたらしい。


「すみません。ちょっと考えごとをしていて。」


「気をつけないと、部長に睨まれるよ?」


「はい。」


私はまた仕事を続けた。

でも頭の中は、抱きしめてくれた時のあの温もりと、あの震えていた声を思い出していた。



うぬぼれかもしれないけれど、私のために泣いてくれたの?





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