誰も信じない
私は何も言えなかった。

心の中ではたっくさんしゃべっているのに、

いっぱい新田さんに話しかけているのに、

声には全く出ないで、ただただ、新田さんを見つめるしかできなかった。


「そんな顔で見つめるなよ。(笑)俺、勘違いするだろ?」


『新田さん、勘違いじゃないよ。私、新田さんが好きだもん。』


「天野さんとケンカでもしたのか?」


『晃一を傷つけたくないの。裏切りたくないの。』


「橘さんが甘えれば、天野さんも許してくれんじゃね?大丈夫だよ。」


『私は新田さんに甘えたいの。気づいて欲しいのに気づいて欲しくないの。』


ほらね、こんなにも心の中では話しているのに、声にならないの。



また涙が零れる。









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