とっておきのSS
ピンクなロイド



「墓参り?」


 怪訝な表情で振り返るロイドに、結衣は頷く。


「うん。去年お盆に帰らなかったから今年は絶対帰って来いってお父さんが言ってるの」


 ラフルールにあるロイドの家で共に生活を始めて一週間後、結衣はロイドにお伺いを立てた。

 去年は昼寝している隙にクランベールに転送されていたので、帰省しそびれたのだ。

 人捜しマシンはまだ王宮にあるので、ロイドと一緒に出向かなければならない。

 結衣はもう王子ではないので、王宮の出入りに許可がいるのだ。


「命日なのか?」

「違うけど、日本じゃお盆にはご先祖様が帰ってくるって言われてるの。だからお迎えの儀式をするのよ」

「相変わらず儀式が多いな」


 日本には面倒な儀式やしきたりが多いと、ロイドは思いこんでいる。和風の結婚式をする時に、蒼太がついでに色々吹き込んだからだ。


「いつ行くんだ?」
「できれば明日から三日くらい」
「そのくらいならオレも一緒に行こうかな。ちょうど休みだし」
「……え……」


 今日本は夏真っ盛りだ。結衣でさえ根を上げそうなほど暑いのに、気候の穏やかなクランベールに住むロイドには過酷すぎるのではないだろうか。


「行くのはやめた方がいいと思うわよ」


 結衣が苦笑して忠告すると、ロイドは不愉快そうに眉を寄せた。


「オレが行ったら都合の悪い事でもあるのか?」
「そうじゃなくて、地獄のように暑いのよ」
「それはぜひ体験してみたい」


 好奇心に幾分目を輝かせるロイドに、結衣は諦めてため息をつく。絶対、甘く見ていると思う。

 地球上にある暑い国の人でさえ、日本のじっとりと湿気を帯びた暑さには耐えきれない人がいるのだ。ロイドは数時間も持たないかもしれない。

 そう思ったが、彼はすっかり行くつもりになっているので、結衣はとりあえず同行を許した。



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