令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
「なんだか先が思いやられるけど、兄を見捨てないで、栞さん?」

「そんな、見捨てるだなんて……」

「こんな兄だけど、根は結構優しいのよ?」

「あ、はい……」


やっぱりそうなんだ……。実はその点がちょっと不安だったんだけど、妹の由紀ちゃんが言うなら安心していいのよね。


「由紀、おまえなあ……」

「じゃ、あたしは帰るから」

「はあ?」


由紀ちゃんの突然の“帰ります”発言に、私も驚いてしまった。もしかして、私達と一緒にいるのがイヤになっちゃった、とか?


「仲直り出来たみたいだし、後は二人で楽しんで? 今すぐ帰ると、お母さんの夕飯に間に合いそうだし」


悠馬さんは腕時計を見て、「ああ、確かに……」と呟いた。
由紀ちゃんは、お仕事で帰りが遅いお母様のために、これから帰って夕飯の支度をするのだと思う。

由紀ちゃんは偉いなあ。由紀ちゃんより年上なのに、ママや婆やに甘えるだけの私が恥ずかしい……


「じゃあ、栞さん。兄をよろしく!」

「あ、はい」

「また会いたいね?」

「ええ、ぜひ……」

「お兄ちゃん、ご馳走さまでした」

「おお。気を付けて帰れよ?」

「うん!」


由紀ちゃんは悠馬さんに元気に頷くと、軽やかな足取りで帰って行った。

由紀ちゃんはとてもいい子で、もちろん私は由紀ちゃんを大好きになっていた。そして由紀ちゃんに認めてもらった事で、悠馬さんと私は本当にカレカノになったんだなと実感し、それを私は嬉しく思った。心から。

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