令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
おやじさんの命日に毎年こうやって墓参りをするのは、俺達を残して逝ってしまったおやじさんの無念に対するせめてもの手向けだと俺は思い、今まで最優先して欠かさないようにして来た。

それなのに、おふくろさんはたかがデートのためにこれを欠かしていいと言うのか?

ましてデートの相手はおやじさんを死に追いやった吉田泰造の孫なんだぞ?
そんな事をしたら、俺は一生おやじさんから恨まれてしまう。もっとも、おふくろさんはその事を知らないから言ってるんだろうが。


それにしても由紀もだが、おやじさんの墓参りについて俺と二人の温度差を俺は常に感じている。俺が言い出さないと、下手すると二人は墓参りをサボりかねないと俺は思っている。

もしかすると、おふくろと由紀はおやじさんを忘れようとしているのかもしれない。それをとやかく言うつもりはないが、俺はおやじさんを忘れたりはしない。少なくても、おやじさんの無念を晴らすまでは……


俺は墓標に向かって手を合わせ、密かに復讐を誓った。心に生じかけた迷いを、吹っ切るかのように。

< 305 / 548 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop