仮からはじまる

「おい、しっかり掴まれよ」

結城真一に言われて。
そんなこと言われても。
手が震えて力が入らないのよ…。
これはもうあれ。
怖くてジェットコースターの手すりにしがみ付く感覚と同じだわ…。

あたしはものすごいスピードで走る原付から振り落とされないように。
結城真一の首に腕を巻きつけてぎゅうとしがみ付いたの。

「そう、それでいいんだよ」

背中に回された腕に力が込められたのに気づいて。
とにかくあたしは必死なのよっ!!

ああ、もう…。
原付ってこんなにスピード出るものなのね…。
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