初恋草



あの風のせいで、斎藤の前髪は揺れていた。


揺れる前髪の間から見えた斎藤の瞳は、なぜか、ひどく哀しそうで寂しそうな瞳だった。



あたしは、そんな瞳に少しだけ見とれていた。



どのくらい時間が経ったのだろう?


気づくと、斎藤の前髪は元に戻っていた。



コホン……じゃあ、気を取り直して…



「ここが屋上。……あたしの大好きな場所なんだ。」

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