青のキセキ
(ズキッ……)


『上司』
『部下』

課長の言葉が胸に刺さる。



何故ショックを受けてるの?
分かってたことじゃない。

課長は、部下思いな上司。

ただ、それだけ。










「課長、私、そろそろ失礼しますね」

席を立ち、鞄を取ろうとした私の腕を、課長が――――掴んだ。


「待て。送る」

「大丈夫です。1人で帰れます」

「どうせ通り道だ。遠慮するな」

「まだ電車もある時間ですから」

「送る」

「......」


私が黙ってしまったのを、了承と認識した課長も席を立ち上がり、スーツの上着を羽織る。



「翔、帰るわ」


翔さんに声を掛け、財布を取り出す課長の左手が目に入る。









そこには、課長が結婚しているという現実があった。


課長が綾さんのものだという証が...。









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