青のキセキ
「大和は興味の無い相手に、あそこまで優しくするヤツじゃないよ」

「私、最初から迷惑かけっぱなしで。ドジでトラウマかかえた変な女だし。そんな部下だから、放っておけなかっただけですよ」


そう言いながら、自分にも言い聞かせる。

変な期待は持っちゃ駄目。


少しでも期待したら、もっともっと課長を好きになりそうだから。


それに、課長が結婚していることは事実なんだから。






「バーベキューかぁ。俺らも行きてぇ~」

包丁を持ったまま、右手を握り締めながら力を込めて言う翔さんに、久香がとんでもない事を言い出した。


「翔ちゃん、うちらも行こうよ。土曜日」

「は?店はどうすんだよ」

「1日ぐらい休んでも平気だよ」

「土曜日は稼ぎ時なん...」

「ぐちぐち言わないの!」

「......はい、分かりました」



翔さん、亭主関白タイプかと思ってたけど、実は尻に敷かれてる?



なんて、思ってる場合じゃなくて。



「ちょ、ちょっと待って!そこまでしなくても......」

「別に、遙菜と海堂さんをどうしようなんて思ってないよ。ただ、綾さんを見たいし、私もバーベキューしたいしさ」

なんて言いながら、久香のニヤニヤした顔が気になる...。


「久香、言い出したら、聞かないからな」

溜息と共に呟き、頭を掻く翔さん。



「ま、そういうことだ。遙菜ちゃん!」


そういうことって、どういうことよ。




「あ、大和には内緒ね。俺たちが行く事」


「え?どうしてですか?」



「あいつの驚く顔が見たいから」

翔さんが悪戯っぽく言う。











「綾には会いたくないんだけどな」


私も久香も、翔さんが綾さんを嫌う理由を知らない。




でも、土曜日、翔さんと久香も来る事になって、正直ホッとしている自分がいた。




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