青のキセキ
「私、何で課長を好きになったんだろう」

項垂れながら呟く。


「遥菜…」

久香が心配そうに私を見る。


「課長を困らせることはしたくないから、想いを伝えようなんて思ってない。でも、側に居るのが辛いの。綾さんと2人でいる課長なんて、見たくなかった」

膝の上に置いた両手を、ぎゅっと握る。




その時。




「美空ちゃん、ちょっといいかな」


声のする方を見ると、石川さんが立っていた。


「話したいことがあるんだけど」





「あ、はい」


断る訳にもいかず、久香たちに断って石川さんの後に着いていった。



みんながいる川原から少し離れた小道にあるベンチに腰を下ろす。


少し動悸がしたけれど、一緒に仕事している内に少しずつ慣れたのか、以前ほど激しくはなかった。




「俺さ、美空ちゃんのこと好きなんだ」


真っ直ぐに私を見つめ、石川さんが言う。


「美空ちゃん、俺と付き合ってくれないかな?」


ちょっと恥ずかしそうに、目を反らした石川さん。


ランチに誘ってくれたり、もしかして…とは思ってた。

でも……。


「私……好きな人がいるんです」


正直に答えた。


「え?好きな人?」

「はい。だから、私、石川さんとは…」


付き合えない。


そう言うつもりだった私に、石川さんが言った。


「その人と付き合うの?」

「…………」

何も言えなかった。


だって、そんな日は永遠に来ないのだから。


「少しでも僕に望みがあるのなら、考えてくれいかな。返事は急がないから」


それだけ言うと、石川さんはバーベキュー広場へと戻って行った。
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