青のキセキ
様子を伺っていると、美空が俯いたまま顔を上げなくなった。



どうした?




思い切って何の話をしているか、聞きに行く事にした。


女ってのは、どうも噂話が好きだから困る。




何の話をしているか聞くと、俺との馴れ初めを話していたという綾。



やっぱり。




綾が腕を絡めてくる。







心の中で舌打ちをしながら、美空の目を気にする俺。

何人かに囃し立てられて、言葉も無い。


そのときだった。


佐山が子どもの話を持ち出したのは。




心臓が大きく脈打った。



俺と綾にはタイムリーすぎる話題。



『諦めた訳じゃない』


『ね、大和』



俺に同意を求める綾。




奥歯をかみ締める。



ここで否定するわけにはいかない。

かといって、美空の前で肯けというのか。

綾が俺を見つめている。






少し間を空けて『あぁ』と答える。





美空が下を向いたまま、俺のほうを見ようとしない。



そのときの美空の気持ちを、俺は全然わかってなかった。









< 236 / 724 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop