青のキセキ
「綾とは近いうちに話をするよ」



繋がれた手。翔さんにそう答える課長の手に力が入る。


絡む指。



鼓動が響いて、胸の奥が熱くなる。




「やっぱり、ダメだよ…」


3人の視線が私に向けられる。



「綾さんは課長を愛してる。なのに、離婚だなんてダメだよ。私は課長の家庭を壊したい訳じゃない……。そんな権利、私にはないよ」


「美空……」


課長の低い声が私の鼓膜を揺さぶる。



「課長の気持ち、とても嬉しいです。でも、今のまま課長のそばにいれたら、それで十分だから」


嘘。本当はもっと課長を感じたい。24時間一緒にいたい。


でも、それは許されないから。



課長が私を好きだと言ってくれたことが、まるで奇跡のようで。


だから、今以上の関係を望んだら罰が当たる。




歯を噛み締めながら、私も繋がれた手に力を入れた。




「課長を想うこと自体、綾さんに対して申し訳なくて。なのに、私のせいで離婚だなんて、そんなの、ダメ……。それに──」





過去を。守れなかった小さな命のことを思いながら、言葉を続ける。


瞳を閉じて。








「私は幸せになっちゃ、いけないんだよ」










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