青のキセキ
拳を口元に当て、なかなか言い出そうとしない翔さんの様子に、課長が言った。

「翔、さっきも言ったけど。思ってること全部吐き出せよ。いい機会だしさ」


「...そうだな。わかった」


そういって、翔さんは言葉を続けた。



「綾の浮気相手なんだけどさ、ただナンパされた相手じゃないと思う」




翔さんがそう言って。私たち3人は訳が分からずに翔さんを見つめた。



「それってどういう意味なの?翔ちゃん」


「その男、綾が通ってるスポーツジムのインストラクターだよ」



一瞬その場が静まり返った。





「何で、お前がそれを知ってるんだ?」

課長が翔さんに尋ねる。


「久香との結婚が決まって、ジムに通おうと思ったんだ。ほら、女も結婚式前にエステに行ったりするだろ?それと同じだよ」


「え~!!初耳だよ、私」

久香がびっくりしてる。


「当たり前だろ!言ってないんだから。ま、結局行かなかったし」







「で、体験に言ったわけだ。ジムに。そしたら――――」


「そこに綾の浮気相手がいたわけか......」

課長の言葉に翔さんが首を縦に振った。



「それだけじゃない。綾もそこにいたんだ」

「綾も?」

「ああ。だから、俺はそのジムに行くのやめたんだけど。綾とそのインストラクターが今でも続いているかどうかは知らねぇけど、顔を合わせてるのは事実だぜ」



「だから、お前は綾を毛嫌いするのか...」


「普通なら、疑われないようにジムをやめるだろ?他のジムに通えばいいんだし。そのインストラクターのいるジムにわざわざ通う綾が信用できないんだ。まぁ、浮気したって時点で綾のことは嫌いだけどな」


「そうか...。そうだったのか」











< 277 / 724 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop