青のキセキ
「綾がジムに通ってることは知ってた。でも、近所のジムだとばかり思ってた。お前が行こうと思ったってことは、この周辺にあるジムだってことだよな。ていうことは、綾はわざわざこっちの方まで通ってたってことだろ?その浮気相手に会うために...」


課長は少なからずショックを受けているようだった。


「何度も大和に言おうとしたんだ。でも、綾とやり直すことを決めたお前に、言っていいものかどうか、ずっと悩んでたんだ」


翔さんは申し訳なさそうに言った。



「そっか...。お前に気を遣わせてたんだな。悪かったな」




「なあ、綾とそのインストラクター、まだ続いてる可能性はないのか?」


翔さんが聞く。



「...さあ。どうなんだろう。正直、こっちに帰ってきてから週末だけ一緒に過ごしてたから、普段あいつがどんな生活してるか知らないんだ」


「週末はどんな様子だったんだ?男から電話があったり、メールがあったりとかなかったのかよ」


「まったく分からない。ここ最近は子どもの話題ばっかりだったから...」



課長が少しうつむき加減で話す。








「綾さん、課長のことを愛してますよ」


私は言った。


だって、今日のバーベキューで課長を見つめる綾さんの熱い視線。

課長の赤ちゃんが欲しいと言った、綾さんの表情。

課長との馴れ初めを恥ずかしそうに、でも嬉しそうに話してた綾さん。



同じ女だから...。わかるよ。


綾さんが愛してるのは課長だって。




「課長も分かってるはずです。だから、綾さんを突き放せないんですよね?」




「......」


黙ったまま目を閉じた課長。




それは――――――





――――――――肯定。






「...綾の浮気を許した時点で、俺は綾と夫婦としてやっていこうと決めた。でも、美空、お前と出会って、お前を好きになった。時期をみて、綾に話そうと思ってることは信じてほしい」


ゆっくりと瞳を開け、私を見つめる課長。







私は、課長のそばにいられたら、それでいい。



綾さんから課長を奪おうとか、課長と結婚したいとか。そんなことは今は微塵も思ってない。







だから。





人になんて言われようと、『不倫』でも構わない。







綾さん、ごめんなさい。





課長を想うこと、許して...。




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